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2020年12月4日

特別寄与料に課税される相続税の計算方法(2019年度税制改正)

療養看護に尽くしたことにより、被相続人の財産の維持増加に貢献した相続人に対する寄与分を認める制度は、いままでもありましたが、相続人の配偶者(相続人以外)には認められませんでした。

平成30年度民法改正では、相続人でない親族(6親等内の血族、配偶者、3親等内の姻族)にも特別寄与料についてみとめる改正がなされ、2019年度税制改正では特別寄与料がある場合の相続税について明記されることになりました。

この特別寄与料に関わる相続税についてご説明いたします。

 

特別寄与料にも相続税は課税される

民法改正により、特別寄与料の請求権が創設され、施行されることとなりました。

この特別寄与分や寄与分がある場合の相続税計算について、以前のコラム「特別寄与料の請求権の創設(2019年度税制改正・平成30年度民法改正)」でご説明していなかった点について補足いたします。

 

特別寄与料として取得する金額は、遺贈により取得したものとして当然相続税が課税されます。

特別寄与分にかかる相続税について、相続税の計算方法からご確認ください。

 

相続人の相続分から特別寄与分が出される場合

遺産分割をした後に特別寄与料の請求があり、相続人の相続分から特別寄与料分を支払う場合もあるかと思います。

その場合、相続人は相続税の課税対象となる金額から、特別寄与料分を控除できます。

 

 

特別寄与料による相続税の計算方法

以前のコラムでご説明した、寄与分と相続税の計算方法(例3,例4)に補足して、特別寄与分による相続税について計算していきます。

(相続、遺贈や相続時精算課税に係る贈与によって財産を取得した特別寄与者が、被相続人の一親等の血族(代襲相続人となった孫(直系卑属)を含みます。)及び配偶者以外の人である場合には、その人の相続税額にその相続税額の2割に相当する金額が加算されます。)

 

例3)財産1億5,000万円を法定相続分で分ける(特別寄与分あり)

子A配偶者(被相続人の養子になっていない)に特別寄与分300万円、残りの1億4700万円を子A・子B・子Cで4,900万の法定相続分の分割

 

1億5,000万-基礎控除額4,800万(3,000万+600万×3人)=1億200万円

 

子A 1億200万 × 1/3 = 3,400万円

子B 1億200万 × 1/3 = 3,400万円

子C 1億200万 × 1/3 = 3,400万円

 

各子の相続税:3,400万 ×20% - 200万 =480万円

相続税の総額:480万 × 3 =1,440万円

各子の相続税:1,440万 ×4,900万 / 1億5000万 =470万4000円

子A配偶者の相続税:1,440万 × 300万 / 1億5000万 = 28万8000円(+2割 5万7,600円)

 

 

例4)財産1億5000万円を法定相続分で分ける(特別寄与分あり)

子Aは亡くなっており、子Aには子供がいない。子A配偶者(被相続人の養子になっていない)に特別寄与分300万円、残りの1億4700万円を子B・子Cで7,350万円の法定相続分の分割

 

1億5,000万-基礎控除額4,800万(3,000万+600万×3人)=1億200万円

 

子B 1億200万 × 1/2 =5,100万円

子C 1億200万 × 1/2 =5,100万円

 

各子の相続税:4,950万 × 20% - 200万 = 790万円

相続税の総額:790万 × 2 = 1,580万円

各子の相続税:1,580万 × 7350万 / 1億5000万 =774万2000円

子A配偶者の相続税:1,580万 × 300万 / 1億5000万 = 31万6,000円(+2割 6万3200円)

 

計算してみますと、特別寄与分を受け取っても相続税を支払うことにより受け取れる金額が減ってしまうことがわかるのではないでしょうか。

贈与ですと1年間300万では、贈与税は35万円です。(300万円×15%-10万円)

生前贈与加算の対象となるのは、被相続人により相続又は遺贈により財産を取得した人です。

特別寄与分を請求する際には、これらの観点からも請求するかどうか決めても良いかもしれません。

 

 

特別寄与料による財産は相続税申告と納税が必要

特別寄与料にかかる相続税は、財産取得の事由を知った日から10ヶ月以内に申告する必要があります。
相続人でない被相続人の親族で、被相続人の財産の維持または増加について、特別の寄与をしたものは、相続人に対し寄与に応じた額の金銭の支払いを請求することができます。
当事者間で協議が調わないとき、または、協議することができないときは家庭裁判所の調停または審判の手続きを利用することができます。
特別寄与料の請求が出来るのは、被相続人が亡くなったこととその相続人のことを知った日から6ヶ月以内、または、被相続人が亡くなってから1年以内のいずれか早い日までです。

相続税申告では、相続税を計算して作成した相続税申告書を税務署に提出して、相続税を納付します。

 

 

特別寄与料による更正の請求について

相続人の相続分から、特別寄与料を支払った場合には、相続税の課税対象額から特別寄与分を控除できるとご説明しました。

相続税申告後に特別寄与分を渡した際には、寄与分をもらった特別寄与者は相続税の期限後申告又は修正申告をする必要があります。

特別寄与分を支払った相続人の方は、もらった財産から特別寄与分を渡しているため、税額が減ります。特別寄与料を支払うことを知った日から4か月以内に更正の請求手続きを行うことをお勧めいたします。

自分で手続きをしなければ納税しすぎた税金はもどりません。

期限がありますので、ご注意下さい。

 

施行日について、いつから施行される?

民法(相続法)の改正は2019年(令和元年)7月1日です。

 

特別寄与料の請求は相続税計算をして考えてみよう

相続人以外の相続人の配偶者にも、寄与の請求が可能となった特別寄与料の請求権ですが、この特別寄与分にも相続税がかかります。

請求をお考えの際には、特別寄与料にかかる相続税についても考慮し、請求するかどうか決めることをお勧めいたします。

また、請求してもすべてが認められるとは限りません。療養看護に尽くしたことにより、被相続人の財産の維持増加に貢献したと証明する必要があります。

かなりの資料を準備しなければなりません。

実際に請求を考える場合には、弁護士に相談をすることをお勧めいたします。

相続や生前対策について、ご不明な点や不安な点がありましたら、ぜひ1度ご相談いただければと思います。

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