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2020年7月3日
漫画やアニメでは、親が残した借金を返済するという話がよく見られるかと思います。
例えば、アニメ「ドラえもん」では、のび太が将来に作る多額の借金の返済に追われるセワシが、ドラえもんを送り込むことにより話が進みます。
この借金を返済する話に関して、相続放棄をしたら良かったのに…なんて思うことはありませんか?
実際に、借金など負債・債務が相続財産にあり、どのような対処法があるのか悩まれる方もいらっしゃるかと思います。
そのような借金の対処法について、相続放棄以外の対処法や相続放棄ができない場合についてご説明します。
借金などの負債や債務は、時効が成立することで支払い義務はなくなります。
借金の時効は、家族や友人などから借りた場合には10年(民法167条)、銀行や消費者金融などから借りた場合には5年(商法522条)となっています。
これら借金には、お金を貸した人が、お金を借りた人に対して請求などをしないこと(請求など時効の中断)により借金が消滅する消滅時効と、所有の意思をもって一定期間使用すること(一定期間の所有)により所有権を取得できる取得時効があります。
時効成立は、時効の中断がなく時効期間を満たした上で、時効制度を利用することを貸主に伝えることで成立します。
※2020年4月1日より、債権法の改正があるため注意しておきましょう。
時効が成立することで、借金は返済しなくても良くなります。
しかし、貸主が返済請求をしない可能性は限りなく低く、差し押さえなど時効の中断により、時効期間を満たしての消滅時効成立は難しいと考えられます。
借金などの債務を清算するには、消滅時効成立を期待するのは厳しいため、地道に返済するしかありません。
その生前の借金ですが、相続の際にはマイナスの財産として相続財産に含まれます。
借金などマイナスの財産は、相続の際にどのような対処法で解決すると良いのでしょうか。
相続財産に借金などマイナスの財産があった場合、相続放棄か限定承認をすることで、負担を減らしたり無くしたりすることができます。
借金を一切背負いたくないとお考えの際には、相続放棄をすることで借金の返済は不要となります。
相続放棄とは、相続財産の相続権を放棄することです。
相続放棄をすることで、借金などマイナスの財産を相続しなくても良くなりますが、同時にプラスの財産の相続権も一切放棄することとなります。
財産のすべてを放棄することになりますので、形見の品すら受け取ることができなくなる点については注意しておきましょう。
家庭裁判所へ相続放棄の申述を相続人が行うことで、相続放棄の手続きはできます。
手続きの期限は、相続人が自己のために相続の開始があったことを知った時から3ヶ月ですが、家庭裁判所へ申立てをすることで、期限を延長できます。
相続の際に、すべての財産を相続する方法を「単純承認」と言います。
単純承認をした場合、プラスの財産だけでなく借金などマイナスの財産も相続し、借金の返済も行わなければいけなくなります。
相続したプラスの財産よりもマイナスの財産の方が多い場合には、相続人自己の財産からマイナスの財産を弁済します。
それに対して、限定承認というものがあります。
限定承認の手続きを行うことで、プラスの財産の範囲内で遺産を相続することが可能です。
相続放棄はすべての財産を放棄するため、形見の品などを残すこともできなくなりますが、限定承認であれば、形見の品を残しつつ多額の借金を背負う必要もなくなります。
家庭裁判所へ限定承認の申述を相続人全員で行うことにより、限定承認の手続きはできます。
手続きの期限は、相続人が自己のために相続の開始があったことを知った時から3ヶ月ですが、家庭裁判所へ申立てをすることで、期限を延長できます。
限定承認と相続放棄の違いは以下のようになっています。
限定承認 | 相続放棄 | |
---|---|---|
手続き内容 | 財産の範囲内で債務も相続 | 全財産の相続を放棄 |
手続き方法 | 家庭裁判所へ申述を行う | 家庭裁判所へ申述を行う |
手続きする人 | 相続人全員で行う | 放棄したい相続人が行う |
手続き期間 | 3ヶ月以内 | 3ヶ月以内 |
期間の延長 | 家庭裁判所へ申立て | 家庭裁判所へ申立て |
借金などを背負いたくない場合には、相続放棄や限定承認をすることで、借金返済をする必要がなくなります。
しかし、相続放棄できないこともあります。
以下の場合には、相続放棄できませんので確認しておきましょう。
相続放棄には期限があり、相続人が自己のために相続の開始があったことを知った時から3ヶ月以内に手続きを行わなければ、相続放棄ができなくなります。
また、相続放棄の書類に不備などがあり、再提出が間に合わなかった場合にも相続放棄できません。
相続開始後すぐに財産調査を行い、マイナスの財産とプラスの財産のどちらが多いか確認し、相続放棄を考える場合には手続きに取りかかりましょう。
相続放棄などの手続きを行う前に、借金返済の請求に応じて1円でも返済してしまうと、相続放棄はできなくなります。
また、不動産の土地などを現金化しようと売却したなどの場合にも、遺産を処分したと見なされ、相続放棄できなくなります。
それらの場合には、単純承認の相続と見なされるため、注意しておきましょう。
借金返済を背負いたくないから相続放棄をしたいけど、欲しい遺産を故意に隠した場合も、相続放棄はできなくなります。
必要のない借金などマイナスの遺産のみを相続放棄することはできません。
もし仮に、遺産を故意に隠した場合には、単純承認として相続することを認めたと見なされます。
相続の際に相続放棄と限定承認のどちらをするか、財産がどのくらいあるかわからないために迷うこともあるのではないでしょうか。
生前や早い段階に借金を把握できれば、すぐに判断して余裕を持った申告もできます。
親や兄弟の借金を調べる方法として、信用情報機関から借り入れ情報を取り寄せる方法が確実です。
全国銀行協会の全国銀行個人信用情報センターでは銀行からの借り入れが、CICやJICCへの情報開示請求により消費者金融やクレジットカードなどの借り入れ(カードローンやキャッシング)を調べることができます。(委任状が必要)
相続財産に不動産がある場合は、抵当権が付いていないかを調べましょう。
また、団体信用生命保険に加入しているかどうかも注意しておく必要があります。
加入していれば、住宅ローン契約者が亡くなった場合には、保険会社から金融機関へ住宅ローンの残額分が支払われます。
住宅ローンはなくなるため、相続人が住宅ローン債務を相続しなくてもよくなり、相続放棄をする必要は無くなります。
相続財産の中に、借金など負債や債務があった場合、相続放棄や限定承認の手続きをすることで、借金返済をする必要はなくなります。
しかし、いざ借金が発覚した場合には、どのように対処したら良いのか迷うこともあるのではないでしょうか。
弊社では、財産評価をしっかり行い、相続人の方にとって最適な相続をご提案しております。
借金などマイナスの財産がある場合には、ぜひ税理士法人フォーエイトにご相談ください。
相続放棄や限定承認、または単純承認した方が良いのか、税務上の観点や必要な場合には弁護士と協力し、相続人の方の要望に合わせてご提案いたします。